日本全体で夢を持とう

 昭和57年、この年全国の中学校で学校が荒れました。記憶にある方もおられることでしょう。町田T中学校が荒れた学校として毎日のように報道されていました。

 それに刺激されたかのように全国の学校が荒れ始めました。

「生徒を校則でしばりつけている」「管理教育だ」と進歩主義的な評論家の人は批判し、小学校の先生方からは「中学校では何でもかんでも縛りつけるからだ」「制服など無くした方がいい」etc

 評論家の先生、大学の先生の言葉を受けメディアはこぞって学校批判に終始しました。

 その結果中学校では喫煙、シンナーを教室で吸っていようとも注意すらできなくなってしまいました。

 怒ること、注意することすらためらう教師が出てしまったのです。

 ある先生は背中を蹴られ骨を折りました、妊娠中の先生は流産しました(これは事実です)。でも一切保障もなく、心を病み退職して行った教師が数多くいました。

 教育委員会や文科省側はこれらの事象を「指導力不足」と決めつけてしまったのです。それは批判を教師の資質の責任にすれば管理しやすいという意図からです。

 そしてその中、昭和61年、東京都のN中でいじめで自殺する事件が起きてしまいました。いわゆる「葬式ごっこ」です。先生もそれに加担するという異常な状況になってしまいました。

 この事件以来学校での「いじめ」という言葉が社会全体に認識されていきました。

 やがて時を経て、約20年くらい後ですが、今度は「学級崩壊」が小学校を襲い始めます。そしてその子たちが高学年、中学生になると深刻ないじめが起き、今日のように悲しい自殺が連鎖反応で起きてしまっています。

 地域によって学級崩壊、学校崩壊の時期は異なっています。場合によっては全く荒れた学校を経験しない教師もいるくらいです。その教師もまた教師批判をし続けるようになっています。自分は大丈夫だという間違った認識を持ってしまったからです。そういう教師はいじめの本質に気づくことが少なくなっています。いじめの実態を見逃してしまうことが多いのです。

 荒れるメカニズム、いじめのメカニズムには様々人が意見を書き、理論化しようとしています。でもいずれもすべてのケースに当てはまるものはないと言っても良いかと思います。

 なぜなら生徒を取り巻く環境や原因はすべて異なるからです。

 ただ、漠然と共通していることがあります。それはかつて昭和57年当時、「荒れた学校」の時代を経験した生徒が保護者になっている事が多いということです。

 それも中心になっていた生徒ではなく、周りにいた生徒が多いのです。

 荒れた学校時代、荒れた生徒の指導に目が行き過ぎてしまい、実は「いじめ」の指導が不十分で終わってしまったということです。

 意外と突っ張っていた少年たちは現在では、親になり子供の教育には厳しかったりします。

 かえって傍観者だった生徒がモンスターペアレントになっていたり、クレ―マーになったり、それが教師批判、学校批判を繰り返し、正当な指導にすら苦情を言い、学級崩壊を招いています。

 保護者の世代はバブル期に当たります。でもその子供の世代は「平成不況」の時代なのです。

 ここにもいくつか共通の要因があります。保護者の仕事自体、経済的に大変な状況になり子供に目が向けられなくなっているのです。

 兄弟で末の子の方が構ってもらえなくなり、そのはけ口としてその子がいじめをしたり、不良グループの一員となるなど、反社会行動に向かうことがあります。

 もちろんすべてがこの通りにはなりませんので、その点は十分気をつけてください。パターン化した保護者批判も悲劇を生んでいるのですから。

 いじめが教育的な問題だけでなく、経済的な要因があるということに着目してほしいのです。それは学校だけで解決できる問題ではありません。

 絶対に勝ち組とか負け組などという言葉を使ってはいけないと思います。

誰でも子供を不幸にしようとして生んだ親はいないのですから。

 親のイライラは子供の心を不安定にします。高度経済成長期はそれでも、日本には社会的な道徳規範がありました。

 ですから極端に外れてしまう子も少なかったのです。良く言われていたのが、「中3になれば落ち着くよ」だったのです。

 地域の年上の子や、大人の目も行き届いていたのです。

ですが、今は大人に余裕がありません。地域との交流も少なくなっています。

 この高校を出ないと、この大学に入れない、そうでないと良いところに就職できない、、この重圧感、大人の方には分かるでしょうか?子供のためにパートをいくつもこなす家庭が沢山あります。生活保護すら受けられない現状をご存知でしょうか?

 お金持ちしか塾や大学に子供を行かせられない、その影で子供が犠牲になって行きます。

 現実には世の中の社長さんたちは必ずしも高学歴ではありませんね。そもそも高学歴ってなんでしょうか?一流企業って何でしょうか?詳しくないのですが、東証一部上場だけで3400社くらいあるのではないでしょうか?テレビのCMで見る企業だけが一流ではないはずです。

 物を売るには物を作る人がいなくてはいけません。でもなんだか黒スーツにネクタイをしている仕事をしなきゃあいけない風潮になって来たようですね。

 でも、最近ものづくりをする若者や農業、漁業を継ぎたい若者が増えましたね。大変良いことだと思います。

 大人も子供も夢を持てる社会、それは学校や家庭だけで作るのは無理です。企業も地域も日本全体で力や夢を与えるように働きかけてくれないと難しいと思います。

 いじめは単純な問題ではありません。また解決方法も単純ではありません。

 

 

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